顔面神経麻痺後遺症(まぶたの外反、眉毛下垂、深いほうれい線、口角下垂など)
顔面神経麻痺後遺症
顔面神経麻痺には、原因が特定できないベル麻痺、ウイルス性のラムゼイ・ハント症候群、耳下腺腫瘍や頭蓋内の腫瘍による顔面神経障害など、いくつかの原因があります。発症する年齢は様々で、比較的若い頃に発症する場合があります。発症間もない顔面神経麻痺の治療は耳鼻科、脳神経外科、神経内科などが薬剤、場合により神経減圧手術などを行います。一度、顔面神経麻痺を起こすと神経の痛み具合でその後の神経の回復、神経が影響する顔面表情筋の回復具合が変わってきます。神経の痛みが軽度であれば顔面の表情筋はほぼ左右変わらない程度に戻ってきます。しかし、神経の痛み具合が強いと神経が回復する過程(数ヶ月)で表情筋が萎縮したり、また神経の再生過程で過誤支配といって間違った方向に神経が再生してしまうことがあり、口を動かすと目をつぶってしまう様な病的共同運動を起こす場合があります。この様な顔面神経麻痺を起こした後の様々な顔面表情筋による問題を顔面神経麻痺後遺症といいます。具体的には顔面の左右非対称、不自然な表情、顔のこわばり、まぶたが重く視界が狭くなる、口が上手く閉じることができず唾液が漏れる、不自然なしゃべり方になる、涙や唾液腺の分泌不足などが生じます。これにより日常生活に支障をきたすことが多く、適切な治療が必要になります。
顔面神経麻痺後遺症は顔面の表情に影響を与えますが、比較的若い方で症状が軽度の場合、皮膚の張りがあるため表情の左右差が分かりにくくあまり気になりません。しかし、歳を重ねると皮膚の緩みが進み、眉毛が垂れ下がって視野が狭くなる、瞼が重くなる、頬がたるむ、ほうれい線が深くなるなどの皮膚のたるみによる影響が強くなります。これらを改善するには形成外科的な治療が必要になります。
顔面神経麻痺の原因と後遺症
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| 後遺症 |
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顔面神経麻痺に対する形成外科的治療
顔面神経麻痺後遺症に対していくつかの形成外科手術があり、症状によって最適な手術を選択します。
神経再建術
顔面神経麻痺後遺症とは異なりますが、顔面神経を損傷する状況において顔面神経を再建する方法です。腫瘍などで顔面神経を切除した場合は顔面神経の中枢(根本)と末梢(枝)の間に神経を移植する方法と、対側の正常な顔面神経の間に神経移植する方法があります。また、近くの舌下神経の一部を顔面神経とつなぐ方法もあります。神経再建をしてから麻痺した表情筋が動きを取り戻すには何ヶ月も時間がかかり、また回復しても筋肉の動きが弱くなることがあります。
筋肉移植による動的再建術
次に、顔面神経麻痺を起こしてから時間が経過した場合、神経の再建をしても麻痺を起こした顔面の表情筋が萎縮して元に戻らない状態になっていることがあります。その場合は、筋肉を移植して顔面の表情を作る手術(動的再建術)を行います。これは入院して行う必要があり、形成外科手術の中でも難易度が高い手術方法です。
静的再建術
これに対して、静的手術と言われる方法があります。これは下がった眉毛、口角、まぶたなどを引き上げることで表情の左右差を少なくしたり、視界を広げたり、目を閉じることができるようにします。
1,眉毛挙上術
顔面神経麻痺後遺症では前頭筋の麻痺が残ることが多く、この場合、麻痺側の眉毛が下がったままで視界が狭くなります。この症状に対して眉毛挙上術を行うと視界が広がります。この手術は入院することなく日帰りで局所麻酔下に行うことができます。通常の眉毛挙上術では眉毛の直上の皮膚を切除するので額のしわの左右差が目立つことが多く、傷がやや目立ちます。これに対して当クリニックではこれらの欠点を改善するために独自の方法を行っています。生え際で額の皮膚を切除し、その傷から皮膚の下に糸を通して下がった眉毛を吊り上げる手術をしています。この手術のメリットは手術の傷口が生え際で目立たず、また健側の額の皮膚を同じように切除し、しわを減らすことで左右差を少なくすることができることです。下図は当クリニックで行っている眉毛挙上術の手術を受けた方の写真を基にしたイラストです。
2,まぶたの手術
また、まぶたが閉まりにくくなる場合は、まぶたを締める手術があります。傷が目立たないように下まぶたの際を切って内側を縮めたり、耳の軟骨を移植したりして下まぶたを吊り上げます。まぶたの締まりを治す手術は比較的容易にでき、局所麻酔による日帰り手術が可能です。
3,口角挙上手術
顔面神経の完全麻痺の人では口元が垂れ下がって口を締めることができません。この様な方には、口角を持ち上げる手術もあります。筋膜を使って口角と鼻唇溝を耳の方向へ吊り上げます。また、下がった頬の皮膚も耳の前まで吊り上げ余剰部分を切除します。この様にして口角を持ち上げ左右対称性を改善し、口を締めやすくします。手術はやや複雑になりますが、局所麻酔でできるものもありますので、ご相談ください。
4,深い鼻唇溝(ほうれい線)
顔面神経麻痺後遺症、特に不全麻痺の方の症状の一つとして,患側のほうれい線が深くなることがあります。これは神経が回復する際にほうれい線を作る表情筋が拘縮し健側よりも強く引き上げるからです。この治療はフェイスリフト手術に準じた手術治療になります。耳の前から毛髪部にかけて5〜6センチほど皮膚を切って、頬の皮下を剥離しほうれい線より耳側の皮下に糸を入れて耳の前まで導いて引き上げ、さらに頬の緩んだ皮膚を耳の前で切除します。この方法によりほうれい線と耳の間で弛んだ皮膚を耳の方向に引き上げ、ほうれい線の溝を浅くすることができます。手術時間は1.5〜2時間程度で局所麻酔で行うことができ、傷跡は目立たないように耳の前から毛髪内に留まります。
ボトックス注射
ボトックスによる対側表情筋の緊張を緩めることで顔の対称性を得ることができます。顔面神経麻痺後遺症として片側顔面痙攣用の症状である目のまわりの筋肉(眼輪筋)、頬の筋肉(頬筋など)や頸部の筋肉(広頚筋)のこわばりなどの筋肉の拘縮を緩め、症状を和らげることができます。これらの症状がある場合は保険診療としてボトックスの注射を行います。ボトックスの注射後は数ヶ月間、効果が続きますが、時間と共に効きが悪くなるので繰り返し使用することになります。保険適応の場合、一回の費用は3割負担で約15,000円になります。
顔面の表情筋拘縮に対するボトックス注入部位(X印)の例
症状に応じて注入部位を決めます。眼瞼で4−5カ所、口回りで2−3カ所、頸部で3−4カ所。
患者様に合わせた治療法の選択
この様に顔面神経麻痺後遺症に対する形成外科手術は幾つもの選択肢があるので、専門の形成外科医に相談して、患者さんに合った手術方法を選択することが必要になります。
